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椀子(マリコ)ヴィンヤード 吉田 弥三郎

学生時代は林業について学び、卒業後は花の栽培に携わったのち2013年入社。
農業に魅せられ、異分野からワインブドウの栽培へと転じた。自身が歩んだ椀子(マリコ)での3年は、毎年違う顔を見せるブドウと向き合うことで、改めて農業の面白さ・奥深さに気づかされる日々でもあった。椀子(マリコ)の大地と風が育んだワインを一人でも多くの人に届けたいーその思いを胸に、さまざまな可能性にチャレンジする。

花からワインブドウへ

学生時代、林業の勉強をしていたが、農業を経験し、その面白さに目覚めたという。椀子(マリコ)に来て3年になるが、それまでは花の栽培に携わっていた。同じ農業でも、花は施設栽培。ハウスの中なので天候に左右されることはない。一方、ブドウ栽培は自然相手だけに難しい。「椀子(マリコ)発足当時の苦労は、周りからいろいろ聞かされていました。6〜10ヘクタール程の面積からスタートし、当時は雨が降ればぬかるんで、トラクターや軽トラックがハマる、長靴も脱げるといった状況だったようです。粘土質なので、土壌が非常に固い。植える時も石が出て、植えづらかったと聞いています。」

土地と気候に寄り添って

このあたりの気候は雨が少なく、昼間暑いが、夜になると涼しい。ブドウ栽培にとっては最高の環境だという。「風が強いのですが、その風が房を揺らし、ストレスを与えることで実が締まって、成分が凝縮されます。」

椀子(マリコ)はスタートして10年目を迎え、ようやくこの土地に適した品種がわかってきた。「栽培管理を毎年繰り返さないと見えてこないものがあります。品種ごとに一ヵ所にまとめて植えるのではなく、試験的に土壌や環境を変えることで、特徴を見つけます。場所によって標高が若干違うし、土壌や風通しも違う。そういう条件の違いで、ブドウの育ち具合を見るのです。試験品種を含め、多品種を扱っていますが、どの品種も手のかけ方は同じ。試験的にいろいろなことにトライし、土地の持っているポテンシャルを把握した上で栽培の方向性を見極める。いずれにしても答えが出るのは、ワインになった時。長い時間がかかります。」

より多くの人に届けるために

10年目を境に収穫量は70トンまで増え、ここ3年は安定している。「豊作だった昨年は約90トンで過去最高でした。でも、今の畑の規模であまり獲れ過ぎてしまうと品質が低下するので、安定的に70トン収穫できるようにするのがベストです。」

ブドウの品質を上げた上で、今後は椀子(マリコ)のワインを少しでも増やしていきたい。「販売を開始すると、あっという間に売り切れてしまいます。なので、できるだけ本数を増やし、より多くの方に飲んでもらいたい。植えていない区画も含めてブドウ畑が拡がれば、このあたり一帯の景観も、さらによくなっていくと思います。」

地域と共に

椀子(マリコ)の特徴の一つとして、地域とのつながりが強く、いろいろな場面で協力していただいています。もっとブドウの品質を上げ、量も増やし、僕らとしても、椀子(マリコ)を盛り上げていきたい。毎年、収穫祭のイベントを行っているのも、その一環です。6日間で300人以上集まりますが、9割が地元の人で、残りの1割が遠方からの人。皆さんに、収穫の作業を手伝っていただくことで、椀子(マリコ)を知っていただく機会にもなっています。」

いいブドウは、ワインを知ることから始まる

最近、ようやくブドウのあるべき姿が見えてきたという。「ブドウ栽培は難しい反面、ハマると、その奥深い世界の虜になります。昨年と同じように栽培しても、必ず違う結果が出る。こうすれば、こうなるという関連性がわかってくると面白い。その経験知は予想につながり、それが当たるとさらに面白くなります。ワインの味は多様で、奥が深い。ワインがわからなければ、いいブドウができません。もっとワインに親しんで、いろいろ試していきたい。」

いいブドウからしか、いいワインは造れない。当たり前だが、そのプロセスには、実に複雑かつ繊細で、地道な作業が求められる。自然と向き合う農業の厳しさは、それゆえ、大きな実りを作り手にもたらす。人がワインに魅了される理由もまた、そこにある。

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