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2004年4月上旬、フランス・ボルドー「シャトー・マルゴー」の醸造責任者を務めるポール・ポンタリエ氏を、3年ぶりに『シャトー・メルシャン 醸造アドバイザー』として招聘しました。氏の来日に併せて「シャトー・メルシャン プリムール・テイスティング・セミナー2004」を開催いたしました。


セミナー開催の前日、我々メルシャン勝沼ワイナリーのスタッフは、ワイナリーにてポール・ポンタリエ氏を交え、シャトー・メルシャンの目指すべきワインのスタイル「フィネスとエレガンス」の確認と、さらにそれらを追求していくため、今後のワイン造りについて討議を重ねました。その後、氏を「マリコ・ヴィンヤード(長野県丸子町)」に案内し、丸子町の気候・風土、植栽の状況などを説明。ぶどうの栽培技術に関しても貴重なアドバイスを受けました。

今回のセミナーは2部構成としました。第1部は、長野県丸子町に造成した自社栽培畑「マリコ・ヴィンヤード」にて、畑の植栽状況について説明。第2部は、各種ワインのテイスティングとポール・ポンタリエ氏のワイン造りの哲学を語ってもらいました。

第1部では、主に自社栽培畑の造成に至った理由について解説しました。メルローやシャルドネといった原料ブドウは現在、契約栽培農家の方々に供給してもらっていますが、高齢化を迎えており後継者問題も抱えていること。その一方で今後も原料ぶどうを安定して確保する必要があること。シャトー・メルシャンをステップアップするためには、収量制限などの栽培管理技術を駆使しながらより品質の高いぶどうを収穫する必要があり、自社農園で対処していかなくてはならないこと。そしてこうした課題を解消するために5年間という歳月を要し長野県庁、丸子町といった関係官庁、自治体の協力のもと、ワイン用ぶどう栽培に最適な地として丸子町を見つけたことなどを説明しました。


特に、「マリコ・ヴィンヤード」の詳細については、ディレクター・オブ・ワインメイキングの斎藤が、次のように参加者にご説明しました。

「畑は昨年の6月に第1期の植栽を開始しました。面積にして約6ヘクタール弱ですが、今年植栽する分を含めて約12.5ヘクタールもの畑となる予定です。「マリコ・ヴィンヤード」で栽培する主な品種は、赤ではメルロー、白ではシャルドネですが、他の品種も試験的に栽培し、マリコでの可能性を見極めていきます。」

この畑は、北の方に浅間山が見え、南には蓼科の連峰を臨み、360度遮るものがありません。風通しが良好なだけでなく、風向きが一年を通して同方向であり、降雨量の少なさ、冷涼な気候・風土などと相まって、ぶどう栽培にとって、まさに最適な畑であることを参加者のみなさんにも実感していただけたことと思います。


第2部は、上田市別所温泉にある老舗旅館「中松屋」に会場を移し、2003年に仕込んだばかりのワイン(=プリムール)をテイスティングしていただきながら、トーク形式のセミナーを行いました。

はじめに、斎藤より2003年のミレジムについて報告がありました。


「冷夏であったものの、9月に入り夏に逆戻りしたような残暑が続いたため、収穫期を遅らせました。ところが、ぶどう果を分析したところ、数値の上では酸度、糖度、フェノールなどのバランスがとても良く、これは我々ワイナリースタッフが経験したことのない特異な年であった」という報告に参加者も聞き入っていました。

そして、2004年5月6日にリリースされる『シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原メルロー 1999 シグナチャー』と『シャトー・マルゴー』のテイスティング。「シャトー・メルシャン」シリーズの中でも特別なワイン『桔梗ヶ原メルロー シグナチャー』は、世界NO.1のワイン誌「ワイン・スペクテイター」がニューヨークで2年に1度開催するイベント「ニューヨーク・ワイン・エクスペリエンス」のハイライト「グランド・テイスティング会」に 日本で唯一選抜招待され、その時に試飲に供して世界のワイン愛好家に高い評価をいただいたものです。


このたび、テイスティングに供したのは、以下のアイテムです。

  1. シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原メルロー 1999 シグナチャー
  2. シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原メルロー 2001 シグナチャー
  3. シャトー・マルゴー 2001
  4. シャトー・マルゴー 1999

1998年からポール・ポンタリエ氏が醸造アドバイザーに就かれて、我々はいろんなことを学ばせていただきました。氏に影響を受けて、素晴らしいワインを造るためのぶどう栽培、ワイン造りの考え方や哲学が、我々の中でしっかりと理解でき、それがワインの中に表現できているかを汲み取っていただけるよう、日々研鑚しています。

チーフ・ワインメーカーの味村からは、1999年、2001年のミレジムやテクニカルデータのほか、ポール・ポンタリエ氏の指導の元に、いかに本当に価値あるワイン=「強さだけにこだわらず、"フィネス""エレガンス"を兼ね備えた、絶妙なバランスと完璧な調和の存在するワイン」を目指してワイン造りに当ってきたか、その詳細を実際の味わいとともに説明しました。


桔梗ヶ原メルロー


シャトー・マルゴー


テイスティングの感想をポール・ポンタリエ氏はこのように述べています。

「このワインは造り手のエスプリがよく表れているワインだと思います。あるものだけを出し、決してないものを無理矢理見せようとはしていない。普通なら、自分のワインの強さをもっと見せようとし、その思いがワインの中にどうしても入ってくるものなのですが、メルシャン勝沼ワイナリーのスタッフが造ったワインには、そういう奢ったものがなく、あるものが自然かつ謙虚に現れていて、それが素晴らしい調和を生み出している。」

「これは飲んでいてとても楽しいワインです。フレッシュで果実味も溢れ、口の中も非常に爽やかです。程良いタンニンと強さ、それから飲み口の良さ、アフターの長さといったもののバランスが非常に良くとれていると思います。シャトー・メルシャンのワイン造りのチームの方々が、この方向を今後ともずっと続けていかれることを願っています。」との氏の率直な評に、我々スタッフの日頃の労が報われる思いがしました。

「シャトー・マルゴー 2001」、「シャトー・マルゴー1999」のテイスティングの後、ポール・ポンタリエ氏は自身のワイン造りに関する哲学や思想を次のように語ってくれました。

「ワインとは人間のカルチャーをまさに体現しているものだと思います。またグランヴァンというのは日本の庭園に例えることができるかとも思います。その複雑さ、洗練という点で、非常に共通するものがあると思います。日本の庭園というのは、小さなもの、大きなもの、背の高いものや低いもの、いろいろな色もありますが、どれひとつとして過剰なもの、目立つというものがありません。グランヴァンもそれと同じです。その中にはいろんな要素が混在しています。大事なことは、その調和であり、バランスであり、それに重きを置いていることでしょう。」

「調和、フィネスといったものは、軽さ、弱さといったものでは決してありません。残念ながら今日の世界では、強さというものを表現しなくてはいけないものになっています。
ところが日本人、フランス人といった民族は、強さとは誇示するものではなく、それをいかに隠すかいう美徳をもっています。ワインは日本においてまだ歴史は浅いのですが、日本人の感覚の中には、洗練していく感覚、調和の感覚というものがありますので、必ずやグランヴァンになる可能性を秘めていると思います。そしてあとは日本のテロワールから、いかに素晴らしいワインができるかを今日参加された皆さんがご確認するだけと思います。」

もちろんグランヴァンの域に達するには、永い永い、それ相応の歳月を要するに違いない。我々メルシャン勝沼ワイナリーのスタッフは、今後さらに培っていく技術とこの国のテロワールから、世界に誇れる素晴らしい日本のワインを造っていくのがその使命だと思う。



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