5月【栽培家から】
5月【醸造家から】
春の訪れとともに目覚めた、ぶどう樹。城の平では良質のぶどうを収穫するために、「芽かき」作業が始まった。
「萌芽して、葉が開きだしたら、芽かきを行います。ついた芽全部を伸ばさせたりしたら、まともなぶどうは育ちません。また、密集していると病気にかかりやすくなります。使う芽だけを残し、風通しをよくするために、不要な芽をかきとることから、芽かきといいます。今年は例年よりも10日ほど早いです。」
城の平の垣根仕立て栽培では幹から枝が横に1本伸びている。この枝の部分から出ている芽から元気なものだけを選ぶ。「芽かき」は芽が膨らんできて、こんな風に伸びるだろうとはっきりと見えてきた頃から始めると説明されたが、どの芽がどんな風に伸びるのかは一目ではよくわからない。1本の枝の「芽かき」にかかる時間はわずか数分、まるで無造作に取り除いているようにも見える。この作業で今年のぶどうの出来具合が決まるのだと思うと、そんなに簡単には選べない。やはり経験がものをいう作業なのだ。
「先端の芽は一番成長が強く、他の芽の成長が不揃になるので大抵は取り除きます。あとはこの枝の部分で等間隔になるように、芽が不自然に萎んでいるもの、下の方から出ている芽などを取り除いていきます。ここで残った芽がすべて収穫をもたらすわけではなく、結実して着色の始まる頃にまた成長を見極めて選別=摘房を行います。」
選びに選び抜かれたものだけが、実を付けることができる。シャトー・メルシャンのためのぶどうとは、まさに吟味され、育てられたぶどうなのだ。紫外線の強い5月の陽射しの中で朝から夕方まで中腰で続く、「芽かき」作業。膝にかなりの負担がかかる、日焼けもひどくなる。城の平の「芽かき」作業、約2週間はかかるという。
「夏の炎天下での作業に比べれば、まだ楽です。夏に向かって作業はもっと増えてきて、ハードになりますから。ここ城の平が終われば、長野の桔梗ヶ原、北信などで始まります。桔梗ヶ原では遅霜の心配もありますから、毎年気が抜けません。芽かきをした後で遅霜がきたら、残した芽はすべてダメになってしまいます。始めるタイミングが難しいのです。」
よいワインはよいぶどうから。この基本に忠実に、自然を冷静に見つめ、毎日の作業に情熱を注ぐヴィンヤード・マネージャー 塩原さん。彼の視線は、すでに2002年の収穫の時を見つめている。
【シャトー・メルシャン歳時記・栽培家から】バックナンバー▼
●12月/「翌春の作業に備えて、準備に追われています。」弦間浩一
●11月/「紅葉の季節は、ぶどうの木の具合が分かる季節でもあります。」塩原博之
●10月/「収穫の"その日"を決めるのは、やはり人間の感性です。」斎藤浩
●9月/「果粒のサンプリングを通し、収穫の“その日”を見極めます。」河野力
●8月/「摘芯によって、養分はあますことなく果房へ届けられます。」弦間浩一
●7月/「梅雨時の除葉は、いいぶどうをつくるための大切な作業です。」弦間浩一
●6月/「3日で畑の様子は大きく変わり、誘引作業が忙しくなります。」佐藤学
●5月/「例年より10日早く芽かきが始まりました」塩原博之
【シャトー・メルシャン歳時記・醸造家から】バックナンバー▼
●12月「現状に安住せずに、醸造へのさまざまなトライを。」味村興成
●11月「MLFによって、まろやかな味わいのワインが生まれます。」若生ゆき絵
●10月「さまざまな角度から『醸し』の可能性をみつめています。」味村興成
●9月「穏やかな発酵のために、醸造家としてできることのすべてを。」勝野泰朗
●8月「助演俳優のような味わいをもつワインづくりを。」若生ゆき絵
●7月「澱下げで最高の輝きをそなえ、旅立ちを静かに待ちます。」味村興成
●6月「樽での熟成が終る時、それはワインから語りかけてくれます」鷹野永一
●5月「今年の甲州シュー・ルリーは少し違います」鷹野永一
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