2008年1月。凛とした冬の空気のなか、メルシャン勝沼ワイナリーの新たな一年が動き出した。今年最初の「シャトー・メルシャン歳時記」では、底冷えするワイナリーでのスタッフのこの時期の働きを、ワインメーカー(醸造家)の生駒の声を通してお届けしたい。 『去年の秋に仕込んだワインのほとんどは発酵を終え、冬のこの時期、ワインは樽やタンクでおだやかに清澄あるいは育成の過程へと進んでいます。とはいえ中には早くも瓶詰めされたワインもあります。1月中旬には「シャトー・メルシャン ジェイ・フィーヌ(J-fine)2007 白」をさっそく瓶詰めしました。それにともなう澱下げや濾過といった作業もいろいろとあり、瓶詰めするアイテムはその他にも多数ありますから、製造の現場はいつでもフル回転といった感じです。』 毎年2月頃といえば、辛口ロゼワイン「シャトー・メルシャン ももいろメルロー」がリリースされるのがもはや恒例となった。ワイナリーではいま、このワインの製品化に向けて準備を整えている。 『ご存知の方も多いと思いますが、「シャトー・メルシャン ももいろメルロー」は「シャトー・メルシャン メルロー シュール・リー」の進化形として2005年ヴィンテージから発売され、今年は3ヴィンテージ目を迎えます。「シャトー・メルシャン ももいろメルロー 2007」は、長野県桔梗ヶ原地区産の「メルロー」を主体に、地元山梨県産の「マスカット・ベリーA」をアサンブラージュ(ブレンド)することで、「ももいろ」の名にふさわしい色合いへのこだわり、華やかな美味しさを表現した辛口のロゼワインです。』 「シャトー・メルシャン」ブランドのワインとして色合いや味わいにオリジナリティをもたせるため、醸造の現場ではさまざまな製法をこのロゼワインに投じている。 『このワインの主体である「メルロー」は、セニエ製法といって、黒ぶどうを破砕し、発酵させる前に果汁を引き抜き、薄いピンク色の果汁を発酵させています。また「マスカット・ベリーA」は熱によってぶどうの果皮の色合いを抽出するフラッシュデタントプレスという製法を用いることで、渋みがほとんどなく、「マスカット・ベリーA」由来の華やかな香りと色合いを引き出しています。このようにそれぞれのぶどうの個性を鑑み、互いの特徴を響きあわせることで、どこにもない「ももいろ」の色あいと香りを表現したワイン、それが「シャトー・メルシャン ももいろメルロー」なのです。』 『酒質は、「メルロー」ならではの複雑さを湛えながらも、爽やかでフルーティな味わいとなっています。新酒なので発酵に由来する僅かな泡(炭酸ガス)も楽しんでいただけますね。来月には瓶詰めが予定されているので、今月に入ってそれぞれのワインをアサンブラージュしましたが、今後は色合いや照り、香りなどを精査し、澱下げや冷凍・濾過などのさまざまな条件を、ワインの顔色をみながら決めていきます。』 この時期、樽で発酵させたワインの管理も醸造家たちにとって重要な仕事である。温かな醸造家の手を介することで、ワインもゆっくりと育っていくのだ。 『樽で発酵させた赤ワインや「シャルドネ」などの一部の白ワインは、酵母によるアルコール発酵を終えたあと、マロラクティック発酵(MLF)をさせています。MLFとは、乳酸菌の働きによって、酸味の強いリンゴ酸を穏やかな乳酸へと変える発酵をいうのですが、これによって酸味がまろやかで複雑な味わいのワインになります。ただしんしんと冷え込むこの時期は、寒さが原因で発酵が順調に進むとは限りません。そのため樽の周辺を囲ってヒーターをたくなどして温度を上げ、発酵をサポートしてあげるのです。またバトナージュという、樽の中のワインと澱を攪拌し、沈んでいる酵母に刺激を与え、酵母の持っている旨みを引きだしてやる作業も必要です。ワインを育てていくためには本当に気を抜く暇もありませんし、季節を問わずやるべきことは毎日山ほどあります(笑)。』 「シャトー・メルシャン ももいろメルロー 2007」は、750mlのレギュラーサイズの他に、昨年から新たに360mlのハーフサイズも発売され、一層の好評を博している。この春は、勝沼周辺の桃源郷を思い描きながら「ももいろ」ならではの色合いと華やいだ香り、味わいを存分にお楽しみいただきたい。