数年ぶりの冬らしい冬を迎えている今年の日本列島にあって、長野県上田市(旧丸子町)に展開するメルシャンの自社管理農場「椀子(マリコ)・ヴィンヤード」もまた厳しい寒さに見舞われている。さて今回の歳時記では、今春新たに動き出す、日本ワインの次のステージを見据えた、同農場の活動をお届けしたい。 『ここ数年、暖冬傾向にあったせいか、今冬の寒さは相当にこたえますね。「椀子(マリコ)・ヴィンヤード」は、周囲を見渡すと蓼科山、美ヶ原高原、烏帽子岳、浅間山、そして遙かに北アルプス連山も臨む、風光明媚な景観をもっていますが、働く者にとって冬季は過酷な環境といえますね(笑)。小高い丘にあるので、始終身を切るような風が吹いていて、冬場は晴れの日でも、体の芯まで凍りそうになりながら作業をしている感じです。今年は降雪量も多く気温が低いので、このまま春まで畑に雪が残るでしょうね。』 ぶどう畑における冬の風物詩といえば、剪定である。「椀子(マリコ)・ヴィンヤード」は約12haの広大な畑だけあって、作業量も半端ではない。 『剪定は例年通り12月に入って間もなく始めました。落葉の早いシャルドネから手掛け、シラー、ソーヴィニヨン・ブラン、カベルネ・ソーヴィニヨンと順に終え、いまはメルローの剪定をしています。現時点ではまだ7割位でしょうか。外部スタッフを入れて5名で作業にあたっていますが、ぶどうの樹が休眠から目を覚ます3月中旬頃までには剪定を終えていなければならず、気を抜く暇もありませんね。』 今春、「椀子(マリコ)・ヴィンヤード」は満を持して4haほど拡張される。今からちょうど一年前に造成に取り掛かり、昨年春にはその作業も完了。その後は土を落ち着かせ、ぶどう畑にふさわしい環境を構築してきた。 『この春に新たに増える畑は、もともと傾斜があり水はけは良いのですが、ぶどう畑として使いやすくするために大型の重機を入れて整地しました。昨年は、土を落ち着かせる意味からあえてぶどうは植えず、4haのうち半分を蕎麦栽培に、半分を牧草地として地元の方に提供しました。収穫あるいは刈り取りを終えた秋からは、畑に有機質を投入し、土づくりに取り組んできました。』 『有機質の中身は、米糠(こめぬか)とトウモロコシの芯を砕いたものが主成分で、あとは地元にあるキノコの工場から出る、収穫後の培地ですね。湯気が出ている所もありますが、それは発酵による分解が進んで出ている熱です。この有機質を畑全体に均一に撒き終えたら、トラクターを使って地中に鋤き込んであげるわけです。土壌の潜在性を高めるための初めての試みですが、成果は大いに楽しみですね。』 入念な土づくりを経て、新しく加わる畑。栽培家たちは3月に入るといよいよ苗木を植えるための準備に取り掛かる。剪定と並行しての作業で、忙しさに拍車がかかる。 『今後、苗木を植え付けるにあたっては、作業も相当量にのぼります。トラクターで土を掘り起こし、マルチ(畑に敷くビニール)を敷設し、垣根資材を設置してゆく・・・・・。4haという面積ですし、勾配もある土地ですので作業も容易ではありません。メルシャン勝沼ワイナリーの栽培家が総出で作業に臨むことになりますね。』 新しい畑に植えられるぶどう品種は、シャルドネとソーヴィニヨン・ブランである。有機質を投入し、入念な土づくりからスタートしたぶどうたちの初ヴィンテージに、期待せずにはいられない。「椀子(マリコ)・ヴィンヤード」での秋の恒例となりつつある、収穫体験イベントでは、今春植えられたぶどうたちの成長も確認できるはずだ。