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シャトー・メルシャン歳時記
2008 August
「ヴェレゾン期を前に、摘房講習会を行いました」 VINEYARD MANAGER 弦間 浩一
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世界でも類を見ない棚仕立てで「メルロー」を栽培する長野県塩尻市、桔梗ヶ原地区。ぶどうは順調に生育し、例年ならお盆を境に成熟期へと入っていく。この時期の栽培管理は品質の高いぶどうを得るために非常に重要で、作業について契約栽培農家の方々と確認し合うのも恒例となっている。今回の歳時記では畑で行われた講習会の模様を今年のぶどうの現況とともにお届けしたい。


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『冬季の剪定から始まり、春の芽掻き、その後の新梢誘引作業など、一年を通して「メルロー」を栽培する契約農家は畑に足を運び、その都度適正な栽培管理を行なっています。8月以降の作業は、収穫期を迎えるまでのいわば集大成といった感があります。ぶどう畑もお盆を過ぎる頃には、栽培にとって重要な転機であるヴェレゾン期を迎えます。これは、ぶどう果の生育が肥大生長から成熟生長へと変わり、「メルロー」など着色品種では果粒が黄緑色から薄紅色へと色づきを変えていく段階を指します。この時期の栽培管理が天候と相まってその年のぶどうの品質を決めるだけに、農家のみなさんと資料を元に入念に作業内容を確認しました。』





品質の高いぶどうを収穫する・・・。その方策として、ぶどうの収量制限が挙げられるが作業には指針がある。今年実を付けたぶどうの中で、どのぶどうを残すのか、着色品種にふさわしい色づきをどのように確保するのか、そこが栽培指導にあたる弦間の知見を発揮するポイントである。

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『当社が求めるぶどうは、果粒が小さく凝縮感があり、まんべんなく着色したものです。このようなぶどうを得るための栽培管理として、「摘房」は不可欠ですが、作業の基本は1新梢に対して1房残すこと。摘房時期は、早すぎるとぶどうに病気が発生した場合には、収穫量に影響がありますし、また、残されたぶどうへ養分が行きすぎると果粒自体が大きくなってしまうなど、作業のタイミングが重要になります。また摘房によって残す果房は、新梢から出た二つ目を優先していますが、樹の根元に近い一つ目の房は病気に比較的弱いことがその理由です。とはいえ、二つ目の果房の生育が明らかに他と見劣りしている場合や上(空)を向いていたりする際に残す果房は園主がこれまで培ってきた判断に委ねます。』





ぶどうの果房は大きく分けて二つある。果粒が密着した「にぎり房」と、すき間がある「バラ房」とがあるが病気などに弱い「にぎり房」を落としていくのも摘房の際のポイント。摘房の視点は数多くあるのだ。



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『新梢の伸びが旺盛な夏場は、新梢管理も良いぶどうを造るうえで、大事な作業となります。そこで1新梢に対し、葉数が15枚程度、長さにして1.5mを目安に、棚が暗ければ、新梢を切り落とし明るさを確保してもらわないといけません。ぶどうまわりの風通しを良くし、少しでも陽光が当たるようにするためです。完全に色がぶどうの房に回りきるのは、8月下旬から9月上旬ですが、色づきの悪い房を落として、選抜した果房に養分を集中させること、畑全体の生育ステージを揃えていくことが農家のみなさんのこれからの仕事となります。私の努めは講習を通して、管理の要点とその理由を農家の方々にお伝えすることで、作業を的確に行っていただくようサポートすることにあります。』




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日本を代表する「メルロー」の産地である、桔梗ヶ原地区。次は、長年現場で労を惜しまず栽培にあたる方々の声をお届けしたい。その話からは、2008年という年の「ミレジム」もうかがい知ることができる。












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『今年は芽吹くのも開花も例年並み。ただ、局地的な暴風や大雨が多いですね。他の産地同様、ここ桔梗ヶ原地区もこの夏は猛暑にたたられましたが、その割に生育が進んでいるかというとそうでもない。当組合では30年以上も前から「メルロー」の栽培を手掛けてきました。自然が相手だけに、一度として同じ気象の年というものはありませんが、今年は特異な年といえそうですね。「メルロー」の他に生食用として、「巨峰」、加工用として「コンコード」や「ナイアガラ」などを並行して栽培している人が多いのですが、「メルロー」はそれらに比べて格段に手の掛かる品種です(笑)。病気の対策として防除にも気を遣うし、一昨年のように、収穫期に雨にたたられないとも限らない・・・。このまま秋雨がないことを願うばかりですが、ぶどうのために組合員が一丸となって栽培に最善を尽くしていきたいと思います。(郷原隆一郎組合長)』




棚栽培が主流のなか、2005年に垣根仕立てで「メルロー」の栽培にチャレンジした人がいた。(2005年「シャトー・メルシャン」5月号参照)日比谷 正さんであるが、早3年の歳月が流れ、ぶどう畑も見事な姿になった。以下は、「メルロー」と向き合う日比谷さんの栽培記である。



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『1本1万円ほどになる「シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原メルロー」の原料となるぶどうを栽培していきたい。下請けではなく、栽培家として誇りを感じながらぶどうを育てていきたい。そんな想いから梨畑を一から開墾し、約330本の苗木を植えて足掛け4年になります。現在40aほどの畑で「メルロー」を栽培し、やっと3t弱の収量を見込めるまでになりました。苦労や失敗はいろいろありましたが、痛かったのは去年の収穫期。そろそろ、と思っていた矢先に鳥の被害に遭ってしまい相当落ち込んじゃいました。一年の苦労が台無しになったんですから・・・。農業を営んでいくうえで、今は本当に厳しい時代です。ガソリンや軽油代、肥料や薬剤、資材などもどんどん値上げしていますし・・・。しかも自然相手だけに、成果は思うにまかせないところがある。でも、「畑」で働くことが好きで、この仕事に就いたわけだし、さまざまな困難を克服し、これからも家内共々頑張っていきたいと思います。(日比谷 正さん)』




メルシャンの呼びかけに応じ、日比谷さんの翌年に垣根仕立てで「メルロー」の栽培に着手した人もいる。大野田さんは、教職を定年後に、ぶどう栽培に携わることになった。



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『長年、教職の場にいたこともあり、ぶどうの栽培は長らく経験のある父母の担当でした。もっともワインが好きだったこともあり、定年後を見据え、「メルロー」の垣根栽培に取り組んでみようと思ったのが3年前。日本のトップブランドである、メルシャンへワイン用の原料を提供する、そのやり甲斐の大きさにも背中を押されました。まったくの畑違いの仕事をやってきたこともあり、作業自体はやはり大変ですね。防除のタイミングひとつとっても、自然相手の難しさはありますが、一方で手を掛けたなりの答が出る、ぶどう栽培の妙もある。順調に生育してきた、垣根仕立ての「メルロー」でしたが、残念なことに今年の夏前、一部が病気で立ち枯れしてしまう被害に遭いました。正直、ショックも大きいですが、一日も早く立て直すのがこれからの努めです。(大野田 幸彦さん)』





日本を取り囲む、さまざまな気象の変化に対しては、培った栽培技術を惜しみなく提供していくこと。老木化にともない、ぶどうのポテンシャルが低くなった畑には、より良い苗木を提供していくこと。私たちメルシャン勝沼ワイナリーでは、桔梗ヶ原という無二のテロワールを鑑み、契約栽培農家の労に応えるべく、果たすべき役割をこれからも果たしていきたいと思う。


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